宇宙・地球の謎

ベテルギウス爆発――オリオン座の赤い星は、いつ吹き飛ぶのか。2019年の「大減光」、100年探された相棒「シワルハ」、昼の空に浮かぶもう一つの光まで完全解説

宇宙・地球の謎公開 2026年10月16日ザツレコ編集部
ベテルギウス爆発――オリオン座の赤い星は、いつ吹き飛ぶのか。2019年の「大減光」、100年探された相棒「シワルハ」、昼の空に浮かぶもう一つの光まで完全解説

ベテルギウスはオリオン座の左肩で赤く光る赤色超巨星。2019年の大減光の正体、爆発は「数十年以内」か「10万年後」か、2026年に望遠鏡でとらえられた伴星シワルハ、爆発すれば半月ほどの光が昼の空にも見える理由まで解説。

冬の夜、南の空に目を向けると、オリオン座の左肩でひときわ赤く光る星があります。ベテルギウスです。この星は、いつか超新星爆発を起こすことがほぼ確実とされ、「爆発が近いのでは」という話題が何年かおきに世界をにぎわせてきました。2019年の暮れには、急に暗くなって大騒ぎになりました。そして2026年の夏、100年以上探されてきた「相棒の星」の姿が、ついに望遠鏡でとらえられました。赤い巨星の正体と、爆発の日にこの空で起きることを順にたどります。あっても無くても人生に影響しない、極上のムダ知識をインストールしていこう。

オリオン座の肩で赤く光る、太陽の700倍を超える星

ベテルギウスは、オリオン座でいちばん目立つ星の一つで、正式な記号ではアルファ・オリオニスと呼ばれます。名前はアラビア語に由来し、「巨人の手」を意味する言葉が、長い年月のあいだに書き写されて変わっていったものとされています。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンと結んでできるのが、冬の大三角です。

日本にも呼び名がありました。星の和名を全国から集めた野尻抱影の記録には、赤いベテルギウスを「平家星」、青白いリゲルを「源氏星」と呼んだ地方があったことが残っています。源平の旗の色を、夜空の二つの星に重ねたわけです。

この星は、赤色超巨星と呼ばれる種類の、年老いた巨大な星です。オーストラリア国立大学のメリディス・ジョイスらが2020年に発表した研究では、半径は太陽のおよそ750倍とされました。太陽の場所に置けば、木星の軌道の3分の2ほどまで飲み込む大きさです。重さは太陽の15倍から20倍ほどと見積もられています。地球からの距離は、同じ研究ではおよそ530光年ですが、測り方によって500光年から650光年ほどまで幅があり、いまも決着していません。

赤い色にも理由があります。星の色は表面の温度で決まり、ベテルギウスの表面はおよそ3500度と、太陽の約5800度よりずっと低い温度です。大きく膨らんだぶん表面が冷え、赤く見えているのです。

2019年の「大減光」――爆発の前ぶれと騒がれた理由

ベテルギウスは、もともと明るさが変わる星です。ところが2019年の終わりから2020年の初めにかけて、観測史上でも例のないほど暗くなりました。いつもの明るさの2.5分の1ほどまで落ち、肉眼で見ても、オリオン座の形が変わったと分かるほどでした。これが「大減光」と呼ばれる出来事です。

世界中で「ついに爆発の前ぶれか」と話題になりましたが、星はその年の4月には元の明るさに戻ります。原因を突き止めたのは、パリ天文台のミゲル・モンタルジェスらのチームです。ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTで星の表面を撮影し、2021年6月に科学誌ネイチャーで結果を発表しました。

星はまず、大きなガスの泡を外へ吐き出しました。そのあと表面の一部が冷え、離れていったガスが冷えて固まり、ちりになりました。そのちりの雲が、地球から見て星の南側をおおい隠したのです。つまり大減光は、爆発の前ぶれではなく、巨大な星が息を吐いたあとの「くもり」でした。2023年の春には逆に、いつもより5割ほど明るくなったと報告されています。

いつ爆発するのか――「数十年以内」説と「10万年後」説

では、爆発はいつなのでしょうか。手がかりは、星が中心で何を燃やしているかです。重い星は水素、ヘリウム、炭素と燃料を替えていき、後の段階ほど燃える期間が短くなります。ヘリウムの段階が数十万年続くのに対し、炭素の段階は千年ほどしかありません。どこにいるかで、残り時間の桁が変わるのです。

2020年のジョイスらの研究は、星の明るさの揺れ方をもとに、ベテルギウスは中心でヘリウムを燃やしている段階にあり、爆発まではおよそ10万年かかると見積もりました。

これに対し、2023年には東北大学の斉尾英行らが、まったく違う結論を出しました。明るさの揺れのうち、およそ2200日の長い周期のほうが星の本来の脈動だと考えると、星はもっと大きく、すでに中心で炭素を燃やす最後の段階に入っている、という見方です。その場合、燃料は300年もたずに尽き、さらに数十年で爆発する計算になります。

ただし、この説は査読を受ける前の段階で公開されたもので、ほかの研究者から強い反論が出ました。モンタルジェスは、数多くある大きさの測定のうち二つだけを選んでいる点を指摘し、ハンガリーのコンコイ天文台のラースロー・モルナールは、選ばれた測定が周りのガスやちりで大きめに出ていると述べています。現在も多くの研究者は、爆発はまだ遠い先だと考えています。「数十年以内」は可能性の一つで、決まった予言ではありません。

100年探された相棒、「シワルハ」

その2200日、つまり約6年の周期の正体として、古くから候補にあがっていたのが、ベテルギウスの周りを回る別の星です。伴星がいるのではという考えは1908年には出ていましたが、明るすぎる本体に隠れて、誰も確かめられませんでした。

流れが変わったのは2024年です。明るさや動きの細かな記録から、太陽ほどの重さの伴星が約6年で回っているはずだと、二つの研究が予測しました。2025年7月には、NASAエイムズ研究センターのスティーブ・ハウエルらが、ハワイのジェミニ北望遠鏡で、本体より6等級ほど暗い小さな光をとらえたと発表します。2026年1月には、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのアンドレア・デュプリーらが、ハッブル宇宙望遠鏡などの8年近い観測から、伴星が本体の大気をかき分けて進んだ跡、いわば「航跡」を見つけたと報告しました。

そして2026年7月28日、モンタルジェスらがVLTで撮った画像を天文学の専門誌に発表します。観測は2024年12月で、伴星は本体から角度にしてわずか0.05秒ほど離れた位置に写っていました。重さは太陽の2.6倍から3.1倍ほどで、予想より重かったからこそ見えた、と説明されています。名前は「シワルハ」。アラビア語で「彼女の腕輪」を意味し、「巨人の手」にはめた腕輪というわけです。チーム自身はまだ「候補」と呼んでおり、反対側に回り込む2027年の終わりごろの観測で確定させる予定です。2026年9月には、電波望遠鏡アルマで、本体の大気に800度ほど熱い斑点が片寄って並んでいることも報告され、伴星の影響ではないかと考えられています。

爆発したら、地球の空はどうなるのか

いつか爆発の日が来たら、まず届くのは光ではなく、ニュートリノという素粒子です。星の中心がつぶれた瞬間に大量に飛び出し、光より数時間から最大で1日ほど早く地球に着くと考えられています。岐阜県の地下にあるスーパーカミオカンデなど、世界の観測装置が連携した警報の仕組みも用意されています。1987年に大マゼラン雲で超新星が現れたときも、日本のカミオカンデが、光より先に届いたニュートリノをとらえていました。

光が届くと、空の景色は一変します。天文誌アストロノミーの解説によれば、明るさは半月ほどにまで上がり、その状態が3か月以上続きます。昼間の青空でも1年ほどは見え、夜には数年にわたって肉眼で見え続けると見積もられています。明るい光の点が夜を照らすので、月明かりを頼りに動く生き物や、天体観測には影響が出るかもしれません。

それでも、地球の生き物が危険にさらされることはないとされています。NASAの解説では、オゾン層を傷めるほどの影響が出るのは、およそ50光年より内側での爆発です。ベテルギウスはその10倍以上も遠くにあります。そして数年かけて光が弱まったあと、オリオン座の左肩からは、赤い星が消えることになります。爆発のあとには、中性子星と呼ばれる、都市ほどの大きさに太陽より重い物質が詰まった星が残ると考えられています。

「もう爆発しているかもしれない」は本当か

よく聞く話に、「実はもう爆発していて、光がまだ届いていないだけかもしれない」というものがあります。理屈としてはその通りです。いま見えているベテルギウスの光は、500年以上前に星を出たものだからです。

ただ、星の寿命が数百万年から1千万年ほどであることを考えると、ちょうどこの数百年のあいだに爆発している確率は、とても小さいと言えます。私たちの銀河の中で、肉眼で見える超新星が最後に記録されたのは1604年のことで、それから400年以上、一つも見えていません。

大減光も、相棒の発見も、ベテルギウスがまだ「生きている星」として動き回っている証拠です。爆発がいつかは誰にも分かりませんが、伴星の確認は2027年の終わりごろに予定されています。冬の夜空を見上げたとき、その赤い光は、何百年も前に出発した便りです。

まとめ

ベテルギウスは、太陽の700倍を超える大きさの年老いた赤い巨星で、いつか超新星爆発を起こすと考えられています。2019年の大減光は爆発の前ぶれではなく、ちりの雲によるものでした。爆発の時期は「およそ10万年後」とする見方が主流で、「数十年以内」という説は反論を受けています。100年以上探されてきた伴星シワルハは2026年に画像でとらえられ、2027年に確定を待ちます。爆発すれば半月ほどの光が昼の空にも浮かびますが、地球は安全とされています。

出典・参考情報

  • [A] ESO「Mystery of Betelgeuse's dip in brightness solved」(2021年6月16日・Nature 掲載の Montargès ほかの論文の発表)
  • [A] ESO「Astronomers find strongest evidence yet that Betelgeuse has a companion」(2026年7月28日・Astronomy & Astrophysics 掲載の Montargès ほかの論文の発表)
  • [A] NOIRLab「Gemini North Discovers Long-Predicted Stellar Companion of Betelgeuse」(2025年7月21日・Howell ほか)
  • [A] Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian「CfA Scientists Detect 'Wake' of Betelgeuse's Elusive Companion Star」(2026年1月5日・Dupree・第247回アメリカ天文学会)
  • [A] The Australian National University「Supergiant star Betelgeuse smaller, closer than first thought」(2020年10月16日・The Astrophysical Journal 掲載の Joyce ほかの論文)
  • [B] Sky & Telescope「New Images Confirm: Betelgeuse Has a Companion」(2026年7月30日)
  • [B] Science News「New images reveal Betelgeuse's buddy star」(2026年7月28日)
  • [B] Universe Magazine「Betelgeuse is becoming asymmetrical and developing spots」(2026年9月7日・ALMA による Dent ほかの観測)
  • [B] Space.com「Is the puzzling star Betelgeuse going to explode in our lifetime after all?」(2023年7月10日・Saio ほかの arXiv 2306.00287)
  • [B] BBC Sky at Night Magazine「Could giant star Betelgeuse explode as a supernova any time soon? It depends who you ask」(2024年4月3日)
  • [B] Astronomy.com「When Betelgeuse goes supernova, what will it look like from Earth?」
  • [A] NASA「420 Years Ago, Astronomer Johannes Kepler Observes a Supernova」(2024年)
  • [B] 野尻抱影『日本の星』(平家星・源氏星の呼び名)
  • [B] Wikipedia「Betelgeuse」(数値・経過の確認)

信頼度 A=一次/公的、B=定評メディア・専門書、C=個人発信。事実・証言・諸説を区別して記載。

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