呪われた場所・心霊スポット

スキンウォーカー・ランチ――アメリカ政府が2200万ドルで調べた「呪われた牧場」

呪われた場所・心霊スポット公開 2026年7月7日更新 2026年9月19日ザツレコ編集部
スキンウォーカー・ランチ――アメリカ政府が2200万ドルで調べた「呪われた牧場」

アメリカ・ユタ州に実在する「呪われた牧場」スキンウォーカー・ランチ。牛の変死や空飛ぶ光る玉といった数々の証言をきっかけに、大富豪ロバート・ビゲローが調査に乗り出し、ついにはアメリカ国防総省が2200万ドルを投じて本気で調べた。だが決定的な証拠はいまだ出ていない。事実・証言・諸説を分けて、その正体をたどる。

みなさんこんにちは、雑学レコードです。今日おとどけするのは、アメリカ・ユタ州の片田舎に、ほんとうに存在する「呪われた牧場」の話です。名前はスキンウォーカー・ランチ、英語で Skinwalker Ranch。ここでは、牛が音もなく消えたり、内臓だけをきれいに抜き取られて死んでいたり、空に光る玉が飛び、銃で撃っても倒れない赤い目のけものが出る――そんな話が、何十年も語りつがれてきました。ただの怖い噂話かと思いきや、この牧場には、大富豪が私財を投じて科学者チームを送りこみ、あげくにはアメリカ国防総省が2200万ドル、日本円にしておよそ30億円を使って本気で調査した、という信じがたい事実があります。今日は、確かな事実と、住民たちの証言と、ネットにあふれる諸説を、ていねいに分けながら、この世界一有名な怪奇スポットの正体をたどっていきましょう。では、いってみましょう。

世界でいちばん有名な「呪われた牧場」

まずは、確かな事実からいきましょう。スキンウォーカー・ランチは、アメリカ・ユタ州のユインタ郡、砂漠のような盆地の一角にある、およそ512エーカーの土地です。東京ドームおよそ44個ぶんといえば、その広さが伝わるでしょうか。すぐ隣には、先住民ユート族の居留地、ユインタ・アンド・ウレイ・インディアン居留地が広がっています。

この牧場、正式には「シャーマン・ランチ」とも呼ばれていましたが、いまでは「スキンウォーカー・ランチ」の名で知られています。スキンウォーカーというのは、もともと先住民ナバホ族の伝承に出てくる存在で、ナバホ語では「イー・ナアルドゥローシー」、意味は「それをまとって、四つ足で歩くもの」。動物に姿を変え、人にとりつくとされる、いわば邪悪な魔女です。

ただ、ここでひとつ、冷静に押さえておきたいことがあります。スキンウォーカーはナバホの伝承ですが、この牧場が建つのはユート族の土地。つまり、ちがう部族の言い伝えが、この場所にあとから結びつけられた、という面があるんですね。先住民の研究者のなかには、ナバホやユートの複雑な信仰が、UFOやオカルトの物語とごちゃまぜにされ、ホラーの小道具として消費されてしまっている、と批判する声もあります。ここは、エンタメとして面白がる前に、頭のすみに置いておきたいところです。

シャーマン一家が見たありえない光景

この牧場が一躍有名になったきっかけは、1994年にさかのぼります。テリー・シャーマンとグウェン・シャーマンという夫婦が、この土地を買って移り住みました。田舎でのんびり牧場をやるつもりだった、ごくふつうの一家です。ところが、彼らはやがて、信じられない体験を次々と語りはじめます。

シャーマン一家の証言によれば、飼っていた牛が何頭も、こつぜんと姿を消した。あるいは、内臓や目や生殖器だけを、まるで手術のように正確にえぐり取られ、血の跡もなく死んでいた。夜には空に、青やオレンジに光る玉がいくつも浮かび、飛びまわる。そして、あるとき牧草地であらわれた、犬より大きな灰色のけもの。テリーがライフルで撃ちこんだのに、そのけものは平然とやみに消えていった――こういった話です。

これらはあくまで一家の証言であって、写真や映像でしっかり裏づけられたわけではありません。ただ、当時の地元紙デザレット・ニュースが1996年にこの話を報じ、続いてラスベガスの記者ジョージ・ナップが連載記事で世に広めたことで、「ユタのUFO牧場」として一気に注目を集めることになりました。この盆地では、じつは1970年代からUFOの目撃が地元でよく話題になっていて、そうした土壌もあったんですね。

大富豪ビゲローと、科学で怪異に挑んだ男たち

ここで登場するのが、この物語の重要人物、ロバート・ビゲローです。ホテルチェーンで財をなし、のちに宇宙開発企業ビゲロー・エアロスペースを立ち上げた大富豪ですが、彼には昔から、UFOや超常現象に強い関心があるという一面がありました。

シャーマン一家の語る、牛の変死や奇妙な光の話を聞いたビゲローは、1996年、この牧場をおよそ20万ドルで買い取ります。目的は、住むためではありません。自分がつくった民間研究機関、国立発見科学研究所、通称NIDSに調査させるためでした。ここには、退役した陸軍大佐ジョン・アレクサンダーのような肩書きある人物もくわわり、監視カメラや計測機器をならべて、いわば「標準的な科学のやり方で確かなデータを取る」ことをめざしました。

そして2005年、調査にたずさわったコルム・ケレハーと、さきほどの記者ジョージ・ナップが、『ハント・フォー・ザ・スキンウォーカー』という本を出版します。ここには、UFOや、ビッグフットのような生き物、ミステリーサークル、光る玉、ポルターガイストまで、およそ100件におよぶ出来事が記されました。ただ――ここは正直に言っておかなければなりません。何年も監視をつづけたNIDSは、結局のところ、学術論文にたえられるような決定的な証拠を得ることは「むずかしかった」と、自分たちで認めているんです。数々の証言はある。でも、動かぬ物証は出てこない。この牧場を、その後もずっと悩ませつづけるパターンが、すでにここにあらわれていました。

ペンタゴンが動いた 2200万ドルの極秘計画

さて、ここからがこの話のいちばん驚くところです。ケレハーとナップの本を読んだ一人の人物がいました。国防情報局、DIAの科学者、ジェームズ・ラカツキーです。彼はこの牧場に興味を持ち、ビゲローの許可を得て現地を訪れます。そして、そこで自分でも説明のつかない体験をした、とされています。

ラカツキーからその話を聞いたビゲローは、友人だった有力上院議員ハリー・リードに伝えます。リードと、同じくUFOに関心を持っていた上院議員テッド・スティーブンスは、「この牧場は調べる価値がある」と判断し、なんと国防総省の予算のなかに、UFO、いまでいうUAPを研究するための2200万ドルをそっと組みこんでしまいました。こうして2008年に生まれたのが、先進航空宇宙脅威識別計画、AAWSAPと呼ばれる政府のUFO調査計画です。この計画では、契約先となったビゲローの会社が、まさにこのスキンウォーカー・ランチを主要な研究の舞台にしました。牛の変死、電磁気の異常、目に見えない力によるけが、そしてポルターガイスト現象まで、ありとあらゆる怪異が調査対象になったのです。

2021年には、そのラカツキー自身が、ケレハーやナップと共著で『スキンウォーカーズ・アット・ザ・ペンタゴン』という本を出し、政府の内側からこの計画を語っています。そして興味深いのは、この一連の流れが、いまアメリカで進んでいるUAP情報の開示、2026年の「PURSUE」と呼ばれる政府文書公開のプログラムにまで、まっすぐつながっているということ。つまり、一軒の「呪われた牧場」の噂が、めぐりめぐって、現代のアメリカ政府のUFO政策の出発点のひとつになった、という見方もできるわけです。ちょっと、できすぎた話に聞こえますよね。

「何も起きなかった」と語る人たち

ここまで聞くと、「政府まで動いたんだから、何かあるに決まっている」と思いたくなります。でも、ここはぐっと冷静に、懐疑派の視点も見ておきましょう。

まず、大きな事実がひとつあります。シャーマン一家の前にこの土地を所有していたのは、マイヤーズ夫妻という一家で、彼らはなんと60年ものあいだ、ここに住んでいました。その一家は、「超常的な出来事など、一度も起きたことはなかった」と証言しているんです。懐疑派の作家ロバート・シェイファーは、この点を重くみて、牧場の怪異は「ほぼまちがいなく幻だ」と述べています。いちばん単純に説明するなら、シャーマン一家が、牧場をビゲローに売るために話を盛ったのではないか、と。実際、より突飛な話の多くは、テリー・シャーマン一人の口から出たものだった、とも指摘されています。もちろん、これも一つの説であって、一家が嘘をついたと断定できるわけではありません。

懐疑派の追及は、その後も続きます。有名な超常現象の検証者ジェームズ・ランディは、ビゲローがこの牧場につぎこんだお金を、皮肉たっぷりの「ピガサス賞」、いわば「もっとも無駄な超常研究に贈られる不名誉な賞」に選びました。さらに2023年には、研究者バリー・グリーンウッドが、2200万ドルもかけて何十年も調べたのに、まともな証拠が一つも出てこなかったことを批判し、スキンウォーカーは結局のところ「信仰と希望を売る商売なのだ」と切りすてています。

そして、忘れてはいけないのが商業化の側面です。2016年にビゲローがこの牧場を手放したあと、新しい持ち主のもとで、道はふさがれ、有刺鉄線とカメラで囲まれ、名前は商標登録され、2020年にはヒストリーチャンネルで『ザ・シークレット・オブ・スキンウォーカー・ランチ』という人気番組が始まりました。謎が謎のまま「売れる」あいだは、真相にたどりつかないほうが都合がいい――そう見る人がいるのも、うなずける話です。

まとめ

スキンウォーカー・ランチをめぐる話を、もういちど整理しておきましょう。牛の変死や光る玉、赤い目のけものといった数々の証言があり、大富豪ビゲローが調査に乗りだし、あげくアメリカ政府が2200万ドルを投じて本気で調べた――ここまでは、報道や書籍で裏づけられた事実です。いっぽうで、何十年も、何億円もかけながら、超常現象を証明する決定的な証拠は、いまだに一つも出ていません。前の住人は「何も起きなかった」と語り、懐疑派は「幻」あるいは「商売」と切りすてます。この牧場がほんとうに怪異のふきだまりなのか、それとも、噂と欲望と物語が積みかさなってできた、人間がつくりだした「呪い」なのか。その答えは、いまも512エーカーの砂漠のなかに、静かに眠ったままです。あなたは、どう考えますか。それではまた、次の雑学でお会いしましょう。

出典・参考情報

  • [A] Deseret News「Frequent Fliers?(Zack Van Eyck)」(1996年6月30日)
  • [A] The New Yorker「How the Pentagon Started Taking U.F.O.s Seriously」(2021年5月)
  • [A] The New York Times「Can Robert Bigelow (and the Rest of Us) Survive Death?」(2021年1月)
  • [B] Wikipedia「Skinwalker Ranch」「Skin-walker」
  • [B] Colm A. Kelleher, George Knapp『Hunt for the Skinwalker』(2005)/『Skinwalkers at the Pentagon』(2021)
  • [B] History Channel「The Secret of Skinwalker Ranch」(2020〜)
  • [B] Skeptic Magazine「Claims About a Government "UFO Program"(Robert Sheaffer)」(2020年5月)
  • [B] Journal of Scientific Exploration「Skinwalkers at the Pentagon(Barry Greenwood)」(2023年5月)
  • [C] Vice/Deseret News/Salt Lake Magazine 各種特集記事(所有者変遷・商標)

信頼度 A=一次/公的、B=定評メディア・専門書、C=個人発信。事実・証言・諸説を区別して記載。

この記事は事実と説・伝承を区別して記述しています。

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