宇宙・地球の謎

宇宙人に、地球の住所を教えてしまった――ボイジャーの金のレコード、49年目の現在地

宇宙・地球の謎公開 2026年8月20日更新 2026年10月13日ザツレコ編集部
宇宙人に、地球の住所を教えてしまった――ボイジャーの金のレコード、49年目の現在地

1977年8月20日に打ち上げられたボイジャー2号には、金メッキされたレコードが1枚積まれている。55の言語による挨拶、クジラの歌、115枚の画像、そして恋する女性の脳波。ジャケットには地球の位置を示すパルサー地図が彫られ、ホーキングは「住所を教えるな」と警告した。49年目のいまも動き続ける探査機と、その金の円盤の話を、事実と諸説に分けてたどる。

1977年8月20日。フロリダのケープ・カナベラルから、1機の探査機が打ち上げられた。名前はボイジャー2号(Voyager 2)。今日でちょうど49年になる。この探査機の側面には、金メッキされた1枚のレコードがボルトで固定されている。中身は、地球という星の自己紹介だ。55の言語による挨拶、クジラの歌、雷の音、そして115枚の画像。さらにジャケットの表面には、地球の位置を示す星図が彫り込まれている。つまり我々は49年前、見ず知らずの相手に向かって、自分の住所を書いた手紙を投げたことになる。今日はその話をする。

打ち上げは2号が先だった

打ち上げは、2号のほうが先だった

まず、ややこしい話から片づけておこう。ボイジャーは1号と2号の2機があるが、先に飛んだのは2号のほうだ。2号が1977年8月20日、1号はその16日後の9月5日である。番号が逆に見えるのは、飛ぶコースが違ったから。1号は木星と土星を最短で回る速い軌道に乗せられ、途中で2号を追い抜いて先に木星へ到着する予定だった。目的地に先に着くほうを1号と呼んだ、というだけの話である。実際、1号は1979年3月に木星へ到達し、2号は同じ年の7月だった。名前は結果から逆算してつけられていたわけだ。

その2機に、まったく同じ金色の円盤が1枚ずつ積まれた。直径は30.5センチ、いわゆるLPレコードと同じサイズ。素材は銅で、表面に金メッキが施されている。金は錆びない。宇宙空間のような真空かつ低温の環境なら、理論上10億年は再生可能な状態を保つとされる。人類が作ったものの中で、おそらく最も長持ちする記録メディアだ。

中身は地球の自己紹介

中身は、地球という星の自己紹介

レコードの内容を選んだのは、天文学者カール・セーガン(Carl Sagan)を委員長とする委員会だった。作業期間はわずか数か月。その短期間で詰め込まれたものを並べると、こうなる。

まず、55の言語による挨拶。日本語も入っていて「こんにちは、お元気ですか」と収録されている。次に「地球の音」と題した音のモンタージュ。火山、雷、雨、波、鳥、ザトウクジラの歌、犬の鳴き声、心臓の鼓動、キスの音、赤ん坊の泣き声、トラクターのエンジン音まで入っている。

音楽は約90分。バッハ、ベートーヴェン、モーツァルトといった西洋古典に加えて、ペルーの葬送歌、ナバホの夜の詠唱、ブルガリアの民謡、そして日本からは尺八の「鶴の巣籠り」が選ばれた。ロックからはチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」が1曲だけ滑り込んでいる。いちばん重いのは、ブラインド・ウィリー・ジョンソンの「Dark Was the Night, Cold Was the Ground」だろう。歌詞のないうめき声だけのブルースで、選定チームは孤独を表すために入れたと説明している。

そして115枚の画像。これがレコードに音として符号化されて焼かれている。太陽系の図、DNAの構造、人体の解剖図、食事をする人、授乳する母親、スーパーマーケット、高速道路、タージ・マハル。地球の履歴書のようなものだ。

ジャケットに彫られた地球の住所

ジャケットに彫られた「地球の住所」

問題は、レコード本体ではなくジャケットのほうである。

アルミのカバーには、いくつかの図形が線で刻まれている。ひとつはレコードの再生方法。回転数を、水素原子が出す固有の周波数を単位にして表してある。言語に頼らず時間の長さを伝えるための工夫だ。付属の針とカートリッジの使い方も図解されている。

そしてもうひとつが、放射状に線が伸びた星図だ。中心が太陽で、そこから15本の線が延びている。うち14本の先にあるのは、規則正しく電波を出すパルサーという天体。各線には二進法でそのパルサーの回転周期が書き込まれている。残る1本は、銀河系の中心の方向と距離を示す線だ。パルサーの周期はごくわずかずつ遅くなっていくので、受け取った側が周期を測れば、この地図が作られた時期まで逆算できる。つまりこの図は、地球の位置と発信した年代を同時に示す座標なのだ。

この方式を考案したのは天文学者フランク・ドレイク(Frank Drake)で、1972年のパイオニア10号の金属板が初出。ボイジャーではそれを流用した。よくできている。よくできすぎている、という人もいる。

恋する脳波と消えたビートルズ

恋する脳波と、宇宙に行けなかったビートルズ

制作の裏話には、いい話と間抜けな話が両方ある。

いい話のほう。「地球の音」の中には、1人の女性の脳波と心拍が1分ほどに圧縮されて収録されている。録音したのは制作チームのアン・ドルーヤン(Ann Druyan)。彼女は1977年6月1日、電話でカール・セーガンと結婚の約束を交わし、その2日後に脳波測定に臨んだ。測定中、彼女は地球の歴史と、恋に落ちたばかりの自分のことを考えていたという。その脳波がいま、地球から210億キロ以上離れた場所を飛んでいる。ラブレターとしては規格外だ。

間抜けなほうの話。セーガンはビートルズの「ヒア・カムズ・ザ・サン」を入れたがった。メンバー側も乗り気だったと伝えられる。だが権利を持つ側との交渉がまとまらず、収録は見送られた。制作に加わったアン・ドルーヤンの証言では、レコード1枚につき5万ドル、それが2枚分という金額を提示されたという。レコード全体の制作費が1万8000ドルだったので、当然、話は流れた。ただしこの一件には諸説がある。同じく制作に関わったティモシー・フェリスは後年、ビートルズの曲はそもそも真剣な検討対象ではなかったと否定している。関係者の証言そのものが食い違っている部分だ、と思ってほしい。

もうひとつ。委員会は当初、裸の男女の写真を入れるつもりだった。人体を正確に伝えるためである。だがパイオニア10号の金属板に彫られた裸の男女の線画が、当時のアメリカで批判を浴びた前例があった。結果、ボイジャーでは写真が外され、シルエットに差し替えられている。宇宙規模のプロジェクトでも、揉めるところは地上と同じだった。

住所を教えるなと言った物理学者

「住所を教えるな」と言った物理学者

さて、ここからが賛否の分かれる部分だ。

物理学者スティーヴン・ホーキング(Stephen Hawking)は生前、地球外知的生命体へ積極的にメッセージを送ることに繰り返し警告を発していた。言い分はこうだ。もし相手が我々より圧倒的に進んだ技術を持っていたなら、接触の結果は良いものにならないかもしれない。ホーキングはこれを、先住民とコロンブスの遭遇にたとえている。あれはうまくいかなかった、と。

この立場から見れば、パルサー地図は地球の住所を彫った金の看板ということになる。宇宙では自分の位置を知らせた者から滅ぼされる、という「暗黒森林」の発想も、この不安の延長線上にある。

一方で、反論も筋が通っている。まず探査機は、光の速度に比べればあまりに遅い。ボイジャー2号が次に恒星のそばを通るのは約4万年後で、ロス248という星から1.7光年離れた場所を通過するだけだ。誰かに拾われる確率は限りなくゼロに近い。さらに、地球は100年近く前からラジオやテレビの電波を漏らし続けている。看板を1枚出す前に、家じゅうの明かりをつけっぱなしにしているようなものだ、という指摘である。

つまり議論の実態は、ボイジャーが危険かどうかではなく、意図的なメッセージ送信をどう扱うべきかという現在進行形の倫理問題に移っている。地球の位置情報を含む信号を電波で送る計画は現在も複数存在し、そのたびに賛否が繰り返されている。ここは事実ではなく、論争として押さえておきたい。

49年目の今日まだ動いている

49年目の今日、まだ動いている

そしてボイジャー2号は、いまも生きている。

動力源はプルトニウムの崩壊熱を電気に変える原子力電池だ。ただし燃料は減り続け、出力は年に約4ワットずつ落ちていく。2024年以降、電力不足のため2機はそれぞれ観測機器を2つずつ停止させてきた。このままでは2026年内にもう1つ止めなければならない、という状況だった。

ところが2026年8月4日、NASAジェット推進研究所は「ビッグバン」と名づけた作業に成功したと発表した。複数の機器の電源を同時に落とし、より消費電力の少ない代替系に切り替えつつ、探査機が凍りつかない温度を維持するという綱渡りの手順である。これによってボイジャー2号は、3つの観測機器をあと1年以上動かせる見込みが立った。同じ手順は今後、地球からより遠い1号にも適用される予定だという。

現在のボイジャー2号は地球から約214億キロ。信号が届くまで片道およそ20時間、返事が返ってくるまで約40時間かかる。1970年代の技術で作られた機械が、半世紀近く経ってもまだ指示を受け取り、返事をよこしている。

まとめ

1977年8月20日に飛び立った金のレコードは、地球の挨拶と音楽と写真、そして誰かの脳波を積んで、いまも飛び続けている。それが本当に誰かに拾われる可能性は、正直、限りなく低い。パルサー地図が危険かどうかも、答えは出ていない。

ただ、あのレコードの本当の宛先は宇宙人ではなかったのかもしれない。数か月で選ばれた55の挨拶と115枚の写真は、「人類とは何か」を短時間で説明しろと言われた人たちの回答そのものだ。宛先不明の手紙を書くとき、人は結局、自分について書く。49年経ってなお動いているあの機械は、たぶんそれを証明している。

出典・参考情報

  • [A] NASA Science/Voyagerブログ「NASA Engineers Help Prolong Voyager 2's Science Mission」(2026年8月4日)
  • [A] NASA Science「Where Are Voyager 1 and Voyager 2 Now?」
  • [A] NASA/JPL「NASA Turns Off 2 Voyager Science Instruments to Extend Mission」(2025年3月5日)
  • [A] NASA Science「Golden Record/Images on the Golden Record」
  • [B] CNN「Big Bang fix boosts Voyager 2's mission in interstellar space」(2026年8月6日)
  • [B] The Planetary Society「The Voyager Golden Records」
  • [B] Popular Science「What is on the Voyager Golden Record?」
  • [B] The Conversation「Blasting out Earth's location with the hope of reaching aliens is a controversial idea」
  • [B] CBS News「Stephen Hawking wants to find aliens before they find us」
  • [C] 音楽メディア各誌によるビートルズ収録断念の経緯(金額・交渉相手は諸説あり)

信頼度 A=一次/公的、B=定評メディア・専門書、C=個人発信。事実・証言・諸説を区別して記載。

この記事は事実と説・伝承を区別して記述しています。

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