宇宙・地球の謎

オウムアムアの正体――太陽系を横切った最初の恒星間天体と「尾のない加速」。8年後の3I/ATLASが示した答え合わせ

宇宙・地球の謎公開 2026年7月31日更新 2026年10月26日ザツレコ編集部
オウムアムアの正体――太陽系を横切った最初の恒星間天体と「尾のない加速」。8年後の3I/ATLASが示した答え合わせ

2017年、ハワイの望遠鏡が捉えた人類初の恒星間天体「オウムアムア」。細長い姿、尾のない加速、宇宙人探査機説まで呼んだ謎を、事実と諸説を分けてたどる。2025年に現れた3番目の恒星間天体3I/ATLASの観測が示した答え合わせまで追った宇宙の雑学。

2017年、ハワイの望遠鏡が、太陽系を猛スピードで通り抜けていく奇妙な天体をとらえた。名前は「オウムアムア('Oumuamua)」。ハワイの言葉で「遠くから最初にやってきた使者」を意味する。人類が初めて確認した、ほかの恒星のまわりからやってきた「恒星間天体」だった。細長い姿、尾のない彗星のような振る舞い、そして重力だけでは説明のつかない加速。この小さな天体は世界中の科学者を悩ませ、「宇宙人の探査機では」という大胆な仮説まで呼び起こした。そして発見から8年後の2025年、3番目の恒星間天体が現れ、謎の答え合わせが少しずつ始まっている。事実と諸説を分けながら、太陽系をかすめて去っていった訪問者の正体に迫る。あっても無くても人生に影響しない、極上のムダ知識をインストールしていこう。

突然あらわれた、恒星間からの使者

2017年10月19日、ハワイ・マウイ島のハレアカラ山にあるパンスターズ(Pan-STARRS1)望遠鏡のデータから、天文学者ロバート・ウェリク(Robert Weryk)が、空を横切る一つの点を見つけた。最初はありふれた小惑星か彗星だと思われた。ところが軌道を計算すると、この天体は太陽の重力に「捕まっていない」ことが分かった。太陽のまわりを回る楕円ではなく、一度だけ通り過ぎて二度と戻らない、開いた軌道(双曲線軌道)を描いていたのだ。

太陽系に入ってくる前の速さは秒速およそ26キロ。太陽に最も近づいたのは発見の40日ほど前、9月9日のことで、そのときの速さは秒速88キロ近くに達していた。地球にも10月14日に約2,400万キロまで近づいている。つまり見つかったとき、この天体はすでに太陽系から去りつつあった。正式名称は「1I/2017 U1」。「I」はインターステラー(恒星間)の頭文字で、記念すべき第一号の印だ。やってきた方向は、こと座の明るい星ベガのあたり。ただし、ベガから来たという意味ではない。ベガは当時、いまとは別の場所にあったからだ。

見たこともない、奇妙なかたち

観測が進むにつれ、奇妙さが次々に明らかになっていく。天体そのものは小さすぎて点にしか見えないが、明るさが数時間ごとに大きく変わり、明るいときと暗いときの差は最大で10倍近くにもなった。そこから、極端に細長いか、平たい形をしていると推定された。縦横の比は少なくとも5対1。モデルによっては、葉巻型なら8対1、円盤型なら6対1ともいわれる。それまでに知られていた小惑星や彗星には見られない、異例の形だった。

大きさは、長い方で100メートルから1キロほど。しかも、きれいに自転しているのではなく、ぐらぐらと不規則に回転(タンブリング)していた。色はやや赤みを帯び、海王星の外側をめぐる天体に似ていた。2018年にはNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡も赤外線で探したが、何もとらえられなかった。見えなかったこと自体が手がかりで、この天体は大きくても数百メートル程度で、光をよく反射する表面を持っている可能性が示された。

尾のない「彗星」――説明のつかない加速

そして最大の謎が待っていた。2018年6月、欧州宇宙機関のマルコ・ミケーリ(Marco Micheli)らが、科学誌ネイチャー(Nature)に報告したのだ。オウムアムアの動きには、太陽の重力だけでは説明できない「余分な加速」があった。太陽から遠ざかる向きに、ほんのわずかだが、押されるように速度が上がっていたのである。

こうした加速は、ふつう彗星に見られる。彗星は太陽に温められると氷がガスになって噴き出し、その反動で押される。ところがオウムアムアには、彗星なら見えるはずのガスやちりの雲(コマ)も、尾も、まったく見つからなかった。何も噴いていないように見えるのに、加速している。彗星のように振る舞うのに、彗星の証拠がない。この矛盾こそ、オウムアムアを伝説の天体にした核心だ。

「宇宙人の探査機」説の登場

説明のつかない加速を、どう解釈するか。ここから話は「諸説」の領域に入る。最も世間を騒がせたのが、ハーバード大学の天文学者アヴィ・ローブ(Avi Loeb)と、同僚のシュムエル・ビアリー(Shmuel Bialy)が2018年に発表した仮説だ。もしこの天体が、厚さ1ミリにも満たない、極端に薄く軽い板だったなら、太陽の光の圧力(放射圧)だけで押されて加速しうる。いわば「光の帆(ライトセイル)」である。

ローブはさらに、そんなものが自然にできるとは考えにくいとして、地球外の文明がつくった人工物、つまり探査機の可能性にまで踏み込んだ。2021年には、この考えをまとめた一般向けの本『Extraterrestrial』も出版している。主張は世界中で話題を呼んだが、多くの天文学者は「証拠が足りない」と慎重だった。これは証明された事実ではなく、一つの仮説だ。ここは「説」として、事実とは切り分けて受け止めておきたい。

自然で説明する挑戦――窒素の氷か、水素か

多くの研究者は、自然の現象で説明できるはずだと考えた。手がかりは「目に見えないガス」だ。望遠鏡でとらえにくいガスが静かに噴き出していたなら、尾が見えないまま加速しても不思議ではない。2021年、アリゾナ州立大学のアラン・ジャクソン(Alan Jackson)とスティーブン・デッシュ(Steven Desch)は、オウムアムアは冥王星のような天体の表面からはがれた「窒素の氷」のかけらだという説を出した。窒素の氷なら、蒸発しても目立つ尾を作らず、光もよく反射する。

2023年には、ジェニファー・バーグナー(Jennifer Bergner)とダリル・セリグマン(Darryl Seligman)がネイチャー誌で、別の答えを示した。水の氷でできた彗星のような天体が、長い宇宙の旅のあいだ宇宙線を浴び続けると、氷の中に水素がたまる。太陽に温められてその水素が抜け出せば、加速が説明できるというのだ。どちらも真剣な試みだが、決定打ではない。生まれ故郷も分かっていない。2018年、ドイツのマックス・プランク天文学研究所のチームは、位置天文衛星ガイアのデータをさかのぼり、数百万年前にオウムアムアとすれ違った四つの恒星を候補に挙げた。だが、どれにも決め手はなかった。

8年後に来た3番目の使者――3I/ATLAS

2019年には、2番目の恒星間天体、ボリソフ彗星(2I/Borisov)が見つかった。こちらはガスとちりを盛大に噴き出す、はっきりとした彗星だった。そして2025年7月1日、チリにある小惑星監視網ATLASの望遠鏡が、3番目の恒星間天体を見つけた。名前は「3I/ATLAS」。太陽系に入る前の速さは秒速およそ58キロと、オウムアムアの2倍以上。動き方から、太陽系の46億年より古い時代に生まれた可能性がある、という研究まで出た。

このときもローブは「人工物かもしれない」と発信し、再び話題になった。だが今回は、観測する時間が十分にあった。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、二酸化炭素を大量に含むガスが噴き出しているのをとらえた。太陽に最も近づいた2025年10月の前後には、重力以外の加速も測られたが、ガスの噴出で説明できる大きさだった。地球に最も近づく前日の12月18日には、宇宙人の電波を探す「ブレイクスルー・リッスン(Breakthrough Listen)」が、アメリカのグリーンバンク望遠鏡で人工的な電波を探したが、何も見つからなかった。3番目の使者は、正直に彗星の姿を見せたのである。

答えは、次の訪問者が知っている

オウムアムアは、発見から数か月で手の届かない暗闇へ消え、2022年には海王星の軌道の外へ出た。もう二度と戻ってこない。だから、その正体をめぐる議論に、完全な決着はついていない。ただ、ボリソフ彗星と3I/ATLASが続いたことで、恒星間天体は決して珍しいものではなく、これからも太陽系を通り過ぎていくはずだと分かってきた。

2025年6月には、チリのベラ・C・ルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory)が最初の画像を公開し、南の空を10年かけて繰り返し撮り続ける観測に乗り出した。研究者は、恒星間天体が数十個の単位で見つかると期待している。欧州宇宙機関は、2028年の終わりから2029年の初めに探査機「コメット・インターセプター(Comet Interceptor)」を打ち上げる計画だ。宇宙で待ち伏せし、条件が合えば恒星間天体に向かうことも想定している。去っていったオウムアムアを追いかける「プロジェクト・ライラ(Project Lyra)」という構想もある。自然の氷のかけらか、それとも――。その答えは、いつか現れる次の訪問者が、そっと教えてくれるのかもしれない。今日も一つ、ムダな知識を、脳の墓場に。

2026年10月9日改定:3番目の恒星間天体3I/ATLAS(2025年)の観測結果を伝える節「8年後に来た3番目の使者――3I/ATLAS」を追加。発見者と発見時の軌道・速さ、スピッツァー宇宙望遠鏡の観測、ミケーリらの加速の報告、窒素の氷説(2021年)と水素説(2023年)の研究者名、ガイアによる故郷探し(2018年)、ベラ・C・ルービン天文台とコメット・インターセプターの計画を追記。冒頭の書き方を改めた。

出典・参考情報

  • [B] Micheli et al.「Non-gravitational acceleration in the trajectory of 1I/2017 U1 ('Oumuamua)」Nature 559(2018年)
  • [B] Bialy & Loeb「Could Solar Radiation Pressure Explain 'Oumuamua's Peculiar Acceleration?」The Astrophysical Journal Letters(2018年)
  • [B] Jackson & Desch, Journal of Geophysical Research: Planets(2021年/窒素の氷説)
  • [B] Bergner & Seligman, Nature 615(2023年/水素の放出による加速の説)
  • [B] Bailer-Jones et al., The Astronomical Journal 156(2018年/ガイアによる故郷の候補星)
  • [A] NASA「New Study Shows What Interstellar Visitor 'Oumuamua Can Teach Us」(2018年)
  • [A] ESA「Comet Interceptor」(打ち上げ時期・目的)
  • [B] IFLScience「Breakthrough Listen Searched Interstellar Object 3I/ATLAS For Technosignatures」(2025年12月の観測)
  • [B] Wikipedia「'Oumuamua」「3I/ATLAS」(軌道・観測年表の照合)
  • [C] 「宇宙人の探査機」説(未検証の仮説として言及)

信頼度 A=一次/公的、B=定評メディア・学術誌、C=個人発信。事実・諸説・検証を区別して記載。「宇宙人の探査機」説は未検証の仮説として扱い、断定していない。

この記事は事実と説・伝承を区別して記述しています。

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